恋愛セミナー17【絵合】第十七帖 <絵合・えあわせ>藤壺の尼宮の催促もあって、亡き六条の御息所の忘れ形見、斎宮がいよいよ冷泉帝の女御になることになりました。 朱雀院はとても残念に思い、入内の日にすばらしい贈り物と歌を届けます。 源氏はその歌を見て気の毒に思い、返歌をするよう斎宮にうながしました。 朱雀院は女性にしたいほど美しく、年も斎宮につり合うのですが、冷泉帝はまだ13歳。 斎宮は9歳年上です。 藤壺の尼宮もこの日は宮廷に参内し、冷泉帝に大人びた対応をするようにさとしました。 元の頭の中将である権大納言の娘がすでに弘徽殿に(弘徽殿や藤壺は帝の妃がすまう場所の名前)女御として入っていて、帝とは年も近く仲が良いのですが、昼間の遊び相手。 斎宮が後から入ってきて弘徽殿の女御と争うことになったことに、権中納言は気を揉んでいます。 紫の上の父、兵部卿宮も娘を入内させたがっていますが、源氏と権中納言の間に割って入ることがなかなかできません。 冷泉帝は絵が好きで、描くことも得意でした。二人の女御のもとに平等に通っていましたが、斎宮の女御も絵を描くことが得意と知ってからはついこちらに足が向いてしまいます。 権中納言は負けまいと絵の上手な人を集めてたくさん描かせ、弘徽殿に持ち込みました。 絵を気に入った帝は斎宮の女御に見せたいと思いますが、権中納言は貸そうとしません。 源氏は権中納言の大人気なさを笑い、屋敷の蔵にある秘蔵の絵をたくさん斎宮の女御のもとに届けます。 権中納言もますます絵を描かせたので、宮廷にはたくさんの絵が集まりました。 この争いに決着をつけようと、斎宮方と弘徽殿方に分かれ、絵の品評会、絵合が行なわれることになります。 お互いに一歩もゆずらない争いになりましたが、最後に源氏が描いた須磨と明石の流浪の絵が、人々の涙をさそい、勝負が決まります。 源氏はこの絵を藤壺の尼宮に贈りました。 こんな風に源氏の復活した宮廷は華やかに栄えていますが、 源氏は心の中で冷泉帝がもっと大人びたら出家しようと考え、静かな土地に御堂を作って準備を始めました。それでもまだ幼い子ども達がいるのでなかなかそんな日はきそうもありません。 恋愛セミナー17 1 斎宮の女御と朱雀院 昔の思い、いつまでも。 2 斎宮の女御と冷泉帝 13歳の男の子と21歳の女性の結婚 3 源氏と藤壺の尼宮 かつて恋仲の二人は。 時は移ろいます。 あの弘徽殿の大后の代わりに、姪にあたる新しい女御の時代になり、源氏も人の親代わりとして斎宮の女御を後押ししています。 藤壺もすっかり冷泉帝の後見として政治家ぶりを発揮していますね。 自分の息子に大人の女性を合わせるあたり、恐いほどです。 一方朱雀帝はどうでしょう。 帝位どころか、思い人まで冷泉帝に譲ってしまうことに。 それでも、斎宮に入内の日には祝いを贈り、絵合のために絵も贈っているのです。 新しい弘徽殿の女御はいとこに当たることもあり、完全に敵に塩を送る形。 政治家にはなれない人なのです。 でも、こんな男性もなかなか魅力的だと思いませんか? あのじゃじゃ馬の朧月夜も、朱雀帝についてともに暮らしていますね。 源氏だって、本当に愛した藤壺と添い遂げることは夢のまた夢。 侮られているように見える朱雀帝と源氏との差は、本当の意味での恋の充足感といった意味ではあまりないのかもしれません。 あの須磨・明石の日々を描いた絵を、待って耐えていた紫の上ではなく藤壺に贈る源氏。 その直後に源氏の出家の意志が現われます。 やはり藤壺と同じ立場に立ちたいということなのでしょうか? |